こんにちは。コトノバです。
いい大人が、映画館で思わず泣いてしまった映画「Coda(コーダ)〜あいのうた〜」についてご紹介します。
映画がについて語るとき「泣ける」という形容は好きではないのですが…
この映画は泣けます、というより泣いてしまうと思います(たぶん)。
でも、これからこの映画を観る人にお願いしたいのは
- 「ただ泣くため」に観ないで欲しい
- 少し大きめの音量で観て欲しい
ということ。
「Coda(コーダ)あいのうた」は、決して特別な家族の特別なドラマではありません。
先天的に耳の聴こえない家族の中で育った主人公ルビーの話ですが、そこで描かれてるメッセージは
- 夢に向かって飛び立ちたい娘
- 変わらない日常が続くことを望む親
- 夢を見ることをあきらめている兄
というどこにでもある家族の話。
人が成長するために、人が変わるために、人が幸せでいるために、それぞれがどう向き合うべきかを考えさせられる、深くて、楽しく優しい笑いと涙の映画。
あと個人的には「音の演出」(歌や音楽だけでなく、生活音など全て)が見どころ(聴きどころ)の映画です。
※「Codaコーダ あいのうた」は2022年7月21日からAmazonプライムビデオで見放題(独占配信)になっています。
「Coda」はこんな映画が好きな人におすすめ
Begin Again はじまりのうた / Once ダブリンの街角で / コンサート / ニューシネマパラダイス / ギフテッド / 世界一キライなあなたに / ラ・ラ・ランド / サウンドオブミュージック / ギター弾きの恋 / 言の葉の庭 / くちびるに歌を
「Coda(コーダ)あいのうた」はどんな映画?
映画タイトルのCodaは、Children of Deaf Adultsの頭文字から略した言葉で、「⽿の聴こえない(聴こえにくい)親を持つ⼦ども」という意味。
さらに⾳楽⽤語として使われるCoda=「最終章」の意味と、両方を掛けたダブルミーニング。
最終章と言っても「終わり」という悲しいものではなく、「新しい章がはじまるための区切り」という新しい未来への切っ掛けというイメージがこの映画の内容にはあっていると思います。
あらすじ
映画「Coda(コーダ)あいのうた」は、フランス映画「エール」のリメイク作品。
「コーダ」の舞台は現代のアメリカとなっていたり、主人公の職業や家族構成(弟→兄)など異なる部分ももちろんありますが、大まかなストーリーの骨格は原作に対し忠実に描かれています。
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。
陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。
新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。
すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。
だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。
悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。
作品情報
作品名:Coda(コーダ)【邦題】あいのうた
制作:2021年 / アメリカ・フランス・カナダの共同制作
原作:La Famille Bélier【邦題】エール
舞台:アメリカ
監督/客本:シアン・ヘダー
キャスト:エミリア・ジョーンズ/トロイ・コッツァー/マーリー・マトリン/ダニエル・デュラント/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ/エウヘニオ・デルベス他
アメリカ最大級のインディペンデント映画祭「サンダンス映画祭」で史上最多の4冠(作品賞、観客賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞)を受賞。アカデミー賞にもノミネート。映画史上最高額の約26億円で落札されるなど、大きな評価を得ています。
または音楽スタッフとして『ラ・ラ・ランド』のマリウス・デ・ヴリーズが担当し、ジョニ・ミッチェルの「青春の光と影(Both Sides Now)」やデヴィッド・ボウイの「スターマン(Starman)」など「この映画のための曲だったのか?」と思わせるほど、Codaのストーリーを引き立てています。
なお俳優の上白石萌音さんのインタビューでCodaの感想を熱く語っています。
映画「Coda(コーダ)あいのうた」の感想・レビュー
歌は「聴こえるもの」ではなく「伝わるもの」。
この映画を観てそのことを痛感させられました。
「歌」は歌詞やメロディーやリズムを耳で聴いて感じるものですが、その本質は音の響き(振動)であり、これをメッセージとして人間が伝えるもの。
耳が聴こえない家族に、ルビーが歌を伝えようとすることで、この映画の中で、音にならないメッセージが人に伝わるということを実感しました。
この映画の耳が聴こえない3人の家族役は実際に耳が聴こえない役者さんが起用されているのですが、主人公ルビー役を演じたエミリア・ジョーンズが、この3人の役者さんに対して本気で歌を伝えようとしたことで、映画を観る人にもそのメッセージが届いたように思います。
何かそういう目に見えないものが、ラストシーンで一気に観る人の心に浸み込んでくる。そんな印象です。
ここからは「良かった点」「気になった点」に分けてもう少し具体的な感想を紹介します。
良かった点
ルビーの歌声と音楽が最高
家業(漁師)を手伝いながら、家族の通訳係として過ごしていたルビーが「歌」に目覚めるストーリーですが、このエミリア・ジョーンズ演じるルビーの歌がとても心に染み入ります。
少しハスキーで素直な声で思いを込めて歌う歌、特にラストシーンの「青春の光と影|Both Sides, Now(原曲ジョニ・ミッチェル)」を歌うルビーの声は心を震わせるものがあります。
笑って泣いて、心あたたまる映画
「笑って、泣いて、心あたたまる」というと、どうも軽い表現なのですが…
やっぱりここがこの映画の魅力。
ストーリー自体、とてもシンプルでわかりやすく楽しめます。
シンプルな分、映画が伝えたい繊細なメッセージを感じ取ることができます。
実際に耳が聴こえない役者を起用
ルビーの3人の家族を演じる役者は、父役のトロイ・コッツァー、母役のマーリー・マトリン、兄役のダニエル・デュトラン。
いずれも実際に耳が聴こえないろう者(聞こえない人)の俳優さんたちです。
ルビー役のエミリア・ジョーンズは、この映画のために手話を覚えたとのことですが、この家族4人の手話を通じたコミュニケーションがすごく自然で、声のないところで本当に愛情が交わされているように感じられる演技でした。
みんなが違う理由で泣くラストシーン
わたしは映画館で観たのですが、最後のクライマックスでは劇場にいた観客のほぼ全員が泣いていたのではないかと思います。
場内のあいらこちらからすすり泣く声が聞こえ、映画が終わって会場のライトが付くと久しぶりにたくさんの大人たちが笑顔で泣いている顔を見ました。
でもこのクライマックスのシーン、おそらく観ている人によって違う感情や理由で泣いているように思います。
実はこのラストシーンに明確な答えはなく、観ている人の受け止め方しだいで感動の理由が異なる。でもでの受け止め方でもグッとくるのがこの映画のラストシーンのすごいところです。
「音」の表現がいい
もう一つはちょっとマニアックかもしれませんが…
わたしは(元サウンドエンジニアという職業柄もあり)映画を観るときいつも「音の表現」に注目してしまうのですが、この映画の音響効果はほんとに素晴らしいのです。
例えばこの映画の中で、音が聞こえない家族と手話だけで会話をしながら食事をするシーン。
よくある表現方法として、こういう声がないシーンでは少しBGMをかけることで観ている人にそのシーンで伝えたい空気感を表現するのですが(原作のエールはBGMで表現しています)、「コーダ」は食器の音や、服がすれる音、空気音などで家族の心情を表現しているいて、これが本当に芸出的です。
「耳が聴こえない」という題材を使いながら「音」での表現にものすごく強いこだわりを感じる作品です。
少し気になった点
軽い下ネタがある
ルビーの家族はとてもフランクで自然なキャラクターのため、ところどころ軽い下ネタが出てきます。
親子など、ちょっと気まずい相手とみる場合は、事前にチェックしてからのほうがよいかもしれません。
軽いので、それほど気にすることはないと思いますが念のため…。
「日本語字幕」の配慮
日本語字幕で「聾啞(ろうあ)者」「健常者」といった表現が出てくるのですが、
現代では耳の聞こえない人のことを「ろう者」と呼ぶのが一般的。
また「健常者」という表現も、やや不適切なためもう少しハンディキャップに対する知識と配慮が必要ではというのが気になるところです。
※ちなみにAmazonプライムビデオの日本語字幕ではちゃんと「ろう者」と記載されています。
まとめ
「1番好きな映画は?」と聞かれたらなんて答えようかと考えることが時々あります。
そういう時、結局は「1つ」は決められないのですが…でも4つ5つ必ず頭に浮かぶ映画があります。
この「Coda(コーダ)あいのうた」はこれから必ずその候補の1つに入ってくる映画になるでしょう。
すごく美しい映像や、美しい歌、心地よい音と、愛くるしい人間味のある出演者たちに、たぶん自分はこれからも何度も何度も、笑ったり、泣いたり、考えさせられたりと、心動かされる映画です。
【追記】7月21日からコーダはAmazonプライムビデオの見放題で観れるようになっています。
Amazonプライム会員でない人も、30日間の無料体験で観ることができますので見放題になっているうちに一度観ておくことをおすすめします。